この記事はウィルゲート Advent Calendar 2025 15日目の記事です。

こんにちは、開発室の水口です。
今回は、詳細な工数見積もりに頼らずに開発を進めるために取り組んだ、チームのフロー改善について紹介します。
ここでいう「見積もりをしない」とは、タスク単位で工数を積み上げて開発期間を算出する方式をやめ、概算見積もりで開発期限を設定したうえで、スプリント(週次)ごとにゴールを決めて進める方法に切り替えたという意味です。
限られた期間の中で「あと何をすればゴールを達成できるか」を埋めていく考え方に移行したことで、見積もり作業に時間をかけすぎず、変化にも柔軟に対応できるようになりました。
見積もり中心の運用で起きていた課題
以前は、詳細な工数見積もりを積み上げ、その数字を基準に開発を管理していました。しかし、その運用には次のような課題がありました。
見積もり作成と根拠説明に時間がかかる
タスクごとに「なぜこの工数なのか」を説明する必要があり、見積もり資料の作成や説明に多くの時間を費やしていました。特に、経験の浅いメンバーや新しい技術領域では、見積もりの精度を上げるための調査だけで相当な時間が必要でした。
想定外の課題対応により、後工程がひっ迫する
実装中に発見された「即対応しなければ前に進められない課題」に時間を取られることで、見積もり時点で想定していたスケジュールが崩れ、後工程にしわ寄せが発生していました。結果として、テストや修正対応の時間が圧迫され、下流工程を担当するメンバーの心理的・稼働的な負担が大きくなっていました。
スケジュール調整の柔軟性が低い
詳細見積もりベースで管理していると、開発途中で発生する追加タスクや調査が「想定外」として扱われ、スケジュールへの影響を説明し、関係者の合意を得る負担が大きくなっていました。そのため、変化に素早く対応することが難しい状況でした。
期限が近づくほど、特定の個人に負荷が集中する
見積もり通りに進まないタスクが出てくると、終盤でタスクを再分配すると連携コストがかかるため、担当者が抱え込むケースが多く、結果として特定のメンバーに負荷が集中する傾向がありました。チーム全体で協力する体制が取りづらい状況でした。
フロー改善のために実施した取り組み
詳細見積もりに依存するのではなく、概算+期間ベースのゴール設定に切り替えたうえで、次の取り組みを行いました。
日次定例を朝夕の2回に変更
従来は1日1回の定例でしたが、朝夕の2回に変更しました。
- 朝(始業後): 次の定例までの作業予定を共有し、優先順位を確認
- 夕方(終業前): 進捗・課題・翌日の見通しを確認し、必要に応じて調整
この変更により、問題の早期発見と迅速な対応が可能になりました。特に、朝の段階で「今日やること」を明確にすることで、メンバー全員が同じ方向を向いて作業できるようになりました。
新しく発生した課題を定例で即相談し、必要に応じてタスク化
開発中に気づいた課題や疑問点は、次の定例まで待たずにSlackなどで共有し、定例の場で正式に議論してタスク化するフローを確立しました。
- 課題への対応タイミングを適切に判断できる
- スプリントゴールとのズレを早期に発見し、調整できる
- 「これは言うべきか」と迷う心理的ハードルが下がり、小さな気づきも共有しやすくなる
このアプローチにより、問題が大きくなる前に対処できるようになり、手戻りの削減につながりました。
粒度を問わず、すべての作業をチケット化してプロジェクト単位で管理
「30分の調査」から「数日かかる実装」まで、すべての作業をチケット化してプロジェクト管理ツールで可視化しました。
- タスクの偏りや詰まりが見える化される
- 誰が何をしているのか、チーム全体で把握できる
- 必要に応じて巻き取り・分担がしやすくなる
- 「隠れた作業」がなくなり、実態に即した工数管理ができる
特に、小さなタスクも含めてすべて可視化することで、「思ったより時間がかかっている作業」や「誰も手をつけていないタスク」を早期に発見できるようになりました。
週次でスプリントゴールを設定し、達成状況を確認
週の始めに「今週達成すべきゴール」を明確に定義し、週の終わりに振り返りを行うサイクルを導入しました。ゴールは「機能Aのフロントエンド実装完了」「APIの結合テスト完了」など、具体的で測定可能なものに設定しています。
これにより、「あと何をすればゴールを達成できるか」という視点で日々の作業を判断できるようになりました。
課題がどう解決されたか
見積もり作成にかける時間が大幅に削減された
詳細な工数見積もりを作成する必要がなくなったため、見積もり資料の作成や説明にかけていた時間を、実際の開発や課題解決に充てられるようになりました。概算での期限設定により、意思決定のスピードも向上しています。
想定外の課題にも柔軟に対応でき、後工程のひっ迫が軽減された
課題を早期に発見し、スプリントゴール全体の中で優先順位を調整できるようになったため、急な課題対応が後工程を圧迫する事態が減少しました。週次で柔軟に計画を見直せることで、テストや修正対応の時間を確保しやすくなり、下流工程を担当するメンバーの心理的・稼働的な負担も軽減されています。
スケジュール調整の柔軟性が向上した
追加タスクが発生しても、定例の場で即座に議論し、スプリントゴールとの兼ね合いを考えながら優先順位を調整できるようになりました。詳細な見積もりへの影響を説明する負担がなくなり、変化に素早く対応できるようになっています。
個人に負荷が集中しにくくなり、心理的・稼働的な偏りが減少した
すべてのタスクが可視化されているため、特定のメンバーに負荷が集中しそうなタイミングで他のメンバーがサポートに入りやすくなりました。また、「この作業は他メンバーもできる」「この作業は専門知識が必要」という判断も共有されるため、適切な分担ができています。
取り組みから生まれた新たな成果
認識ズレが起きにくくなり、状況共有が自然に行えるようになった
1日2回の定例により、「実は進んでいなかった」「思っていた仕様と違った」といった認識ズレを早期に発見できるようになりました。また、チケットベースで管理することで、口頭での伝達漏れも減少しています。
スプリントゴールを起点に「何を残せば達成できるか」を判断できるようになった
週次ゴールを基準にすることで、「完璧を目指す」のではなく「ゴール達成に必要十分な品質」を意識した開発ができるようになりました。優先順位の判断基準が明確になったことで、意思決定のスピードも上がっています。
チーム全員が「開発を進めるために日々できることをやる」というマインドを持てるようになった
「見積もり通りに進めること」が目的ではなく、「ゴールを達成すること」が目的という意識がチーム全体に浸透しました。結果として、メンバー一人ひとりが主体的に動き、困っている人がいれば自然に助け合う文化が生まれています。
結果として、余計な手戻りや詰まりが減り、開発完了まで最短距離で進めるプロセスに近づいた
問題の早期発見と迅速な対応により、大きな手戻りが発生するケースが激減しました。また、タスクの詰まりもすぐに気づけるため、リカバリーが容易になっています。
まとめ
詳細な工数見積もりから週次ゴール設定への切り替えは、単に見積もり作業を省略するだけではなく、チーム全体の働き方を変える取り組みでした。
「いま何が必要か」を日々見極めながら進めることで、変化への対応力と心理的な余裕が生まれ、結果的に開発スピードも向上しました。
もちろん、この方法がすべてのプロジェクトに適用できるわけではありません。長期的なロードマップ策定や複数チーム間の調整が必要な場合には、ある程度の見積もりが必要になることもあります。
しかし、少なくとも私たちのチームにとっては、「詳細見積もりに時間をかけすぎるよりも、柔軟にゴールを追いかける」という方針が、より健全で持続可能な開発スタイルをもたらしてくれました。
同じような課題を抱えているチームの参考になれば幸いです。
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