自律する組織の実現に向けた挑戦

この記事は「ウィルゲート Advent Calendar 2023」最終日の記事です!

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はじめに

皆さん、こんにちは。ウィルゲート開発室の執行役員、向平です。

組織を率いた経験を持つ人なら、誰もが「もっと自ら考え行動してほしい」と考えたことがあるのではないでしょうか? しかし、重要なミッションを抱え、日々の業務に追われる中で、この課題に深く取り組むことは、責任ある立場にある人々にとって容易なことではありません。

それでも、私は4年前に開発室の担当役員に就任してから、自己組織化(ティール型)の組織を実現することを目指してきました。

私の考える、自己組織化とは「自らの発想と判断に基づき行動し、場合によっては組織のあり方そのものを変えていく」そんな組織です。

自律した組織を作るための3つの重要ポイント

今日は、開発室がどのように自己組織化を進めてきたか、そしてその過程で重要だったポイントに焦点を当てて紹介します。

自己組織化はティール型組織とも呼ばれ、一般的に以下の3つの要素が必要とされています。

  • エボリューショナリーパーパス(組織の存在目的):組織が目指す方向とその理由。
  • ホールネス(心理的安全性):メンバーが安心して自分自身を表現できる環境。
  • セルフマネジメント(自己管理):個人が自己管理を行い、組織の一員として責任を持つこと。

これらの要素を組織に根付かせるためには、どのような取り組みが有効か? 本記事では、日々の業務に追われる中でも実施可能なシンプルで効果的な方法を紹介します。

エボリューショナリーパーパス(組織の存在目的)

皆さんが迷いに直面した時、どのように判断しますか? 多くは、異なる観点や過去の経験からメリットとデメリットを比較し、合理的に判断することでしょう。

しかし、メリットとデメリットが拮抗している場合はどうでしょうか?多くの場合、チームの目標や組織の存在意義に立ち返り判断します。

そう、自律的な判断を行うためには、チームの目的・目標や組織の存在意義の共有が不可欠です。

そのため、私たちは重要なプロジェクトにおいて、仕事の背景(As-Is)や目指すべき姿(To-be)を明示しています。 プロジェクトの目標設定も、開発の納期や品質だけに留まらず、解約率など具体的な成果を定量的に測定するものにしています。

これにより、「開発して終了」ではなく、「状態を改善することが目標」という共通の理解を深め、組織全体の行動指針を一致させます。

このアプローチを怠ると、個々の仕事の最適化に固執し、組織全体としての変化や連携が阻害されがちです。 例えば「プログラム構造上の変更が難しい」「仕様は固まったので変更ができない」といった発言は、プロジェクトの背景や目標が十分に共有されていないことが一因になります。

ホールネス(心理的安全性)

もし自分の意見が決定事項に全く反映されていない場合、その決定事項に責任を持って取り組むことは難しいのではないでしょうか? 一方で、意見を出し合い、十分に議論した後、仮に自分の意見とは異なる方向で決定が下された場合でも、多くの人はそれに対して責任を感じやすくなります。

このように責任を感じることは、自分ごと化の第一歩であり、組織に対するオーナーシップを持つために重要です。

しかし、意見を出すことが容易ではない状況もあります。例えば、上司や権威ある人が演説した後、異なる意見を出すことは難しいものです。

この問題を解決するために、我々はチームでの重要な意思決定の際に、各自の意見を付箋紙に書き出し、それを発表する手法を採用しています。 そして、出された意見に対して否定的なリアクションを禁じています。

これにより、遠慮せずに意見を出せる環境を提供し、上位者の意見に同調することも防いでいます。

この付箋を使った手法は、「Googleのデザインスプリント」や「High Performance Operating System(和訳:すごい会議)」などで使用され、チームの自主性や意欲を引き出し、最大の成果を達成するための効果的な手法として知られています。

なお、我々の組織では、すべての人がすべての重要な意思決定に参加しているわけではありません。各階層で意思決定に参加し、その内容を他のメンバーに伝えるようにしています。

セルフマネジメント(自己管理)

もし新しく入社した社員が、ある責任者と同じ知識と能力を有していても、すぐに適切な判断や指示を下すことはできるでしょうか? 仕事の状況や背景、チームメンバーの性格やスキルなど、必要な多くの情報を持ち合わせていないため、いきなり適切な判断や指示を下すことはできません。

結局のところ、その責任者と同じ情報がなければ、同等の判断は下せないのです。 そのため情報がない状態で、オーナーシップを持つことや、積極的に意見を出すことができないのは、当たり前です。

また、皆さんも自分に見えていなかった情報が見えることで、視野が広がったり、視座が上がったりした経験はないでしょうか? 情報を渡すことで、自然と新しい気づきを与え、その気づきに見合った行動を取るようになるものです。

このことから、自律した組織を築くには、情報の共有が必要不可欠です。 私たちも全ての情報を共有するわけではありませんが、必要な情報は可能な限り伝えるようにしています。

なお、プリンシパル・エージェント理論によれば、情報の非対称性は従業員と経営者間の問題を引き起こす原因とされており、情報の透明性を高めることで、従業員の行動を経営者の利益に合致させることが可能とされています。

自律した組織を作るために取り組んできた結果

これまでに取り組んできた自律した組織づくりの成果はどうだったでしょうか?

結果として、数人の中核メンバーに開発組織の運営を託すことができるようになりました。 完全な自律はまだ達成していませんが、理想とする自己組織化に近づいていると感じています。

また、実際に以下のような成果も上げています。

エンジニア採用の成功

エンジニアの採用市場が競争激化する中、過去1年で6名のエンジニアを採用し、退職者はわずか1名でした。これは、組織が内外から魅力的であると評価されている証拠です。

Googleの効果的なチームの5つの因子の改善

Googleが公表している効果的なチームの5つの因子(心理的安全性、相互信頼、構造と明確さ、仕事の意味、インパクト)に注目し、これらを定期的なアンケートを通じて評価しています。その結果、これらの因子が示すチームの健全性は改善しています。

効果的な5つの因子アンケート

開発生産性の改善

『LeanとDevOpsの科学』に基づく生産性指標を用いて定期的に測定を行い、開発の生産性が向上しています。

生産性指標(d/d/d)

開発室運営の委譲

開発室の運営は順調ですが、エンジニアのスキルを事業利益に結びつけることや推進スピードの向上にはまだ課題があります。 これを踏まえ、開発組織の運営を託し、私自身は開発組織と営業組織の統合を推進する他のミッション担うことになりました。

まとめ

自律した組織を構築するにあたり、特に以下の3つの事項に注力してきました。 これらの施策は特別に困難なわけではなく、多くの労力を必要とするものでもありません。

  • プロジェクトにおいて、背景(As-Is)やあるべき姿(To-be)を明示する:目的と方向性を明確にして、自身で判断するための基準を提供します。
  • チームで重要な意思決定をする際に、意見を付箋に書き出し、各自に意見を出してもらう:意見を発することにより、自分ごと化を促します。
  • できるだけ多くの情報を共有し、情報の透明性を高める:経営情報など、上位者が持つ情報と同じ情報を共有して、適切な判断や行動を促します。

もちろん他にも多くの取り組みがありましたが、これらは特に重要だと感じた施策です。

なお、会社や事業の状況、個々の能力や適正によって、最適な組織としてのあり方は変わります。 そのため、我々がティール型と呼ばれるような真に自律した組織になれているわけはありませんし、無理になろうと思っているわけでもありません。

しかし、私は組織に所属する全員が、主体性を持ち、仕事に楽しさを見出せるような組織を目指したいと思っています。

謝辞

自律した組織の実現は、開発室の皆さんの尽力があってこそです。 ここに、彼らへの深い感謝の意を表します。

いつも、ありがとう!! これからも、よろしくお願いします。