開発執行役員として、ウィルゲートで4年間組織作りを通じてできたことできなかったこと

この記事は Willgate Advent Calendar(24日目)の記事です。 qiita.com

どうも初めまして、ウィルゲートでゼネラルマネージャーをやっている鶴飼です。 今年の9月末で執行役員を向平に譲り、引継ぎと後進の育成とその他もろもろ動いています。

入社した2015年5月から振り返ってみると、激動の4年半でした。

エンジニアとしてサグーワークスの新規ドメインに躍起になっていた2015年

入社当初、開発は事業部付けという立ち位置で、メディア事業・コンサル事業・コンテンツ事業に分かれていました。 私は、サグーワークス(旧コンテンツ事業)の開発者として入り、久しぶりのPHPとCakePHPに四苦八苦しながらプログラムに夢中になって楽しんでいたのを思い出します。 当時、コンテンツ事業ではプラチナライターという新しい概念を導入すべく、運用方針から設計しなければなりませんでした。 入社3ヵ月でPMを任され、既存の仕様も分からないまま設計を進めていくのはなかなかチャレンジングだったと思います。 予定していた人員が確保できなかったり、度重なる仕様の変更もありリリース直後は不具合も多発して、使ってくださっているライターの皆様や運用している事業部の方々には大変ご迷惑をおかけしたと思います。 リリース後のてんやわんやも一通り収まった、2016年1月からはマネージャーとしてコンサル事業・コンテンツ事業の開発組織を束ねるようになってきました。 この辺りから、事業部付けではなく、開発室として再度固めていく方針を頭の中に描いていたと思います。

業務範囲拡大、開発室として新たな出発

2016年4月に開発全体の取りまとめとして、ゼネラルマネージャーに就任しました。 はてさて、何をしたものか?と思っていた矢先、取締役の上長から複数のお題が課せられました。

  1. 採用の戦略を考える事
  2. 事業開発全体の戦略を考える事
  3. 開発室としての戦略を考える事

過去からの踏襲や模範となるものもなく、どこからどうやって手を付ければいいか全く分からず日々悩んでいた記憶が懐かしいですw ただ、これらお題の報告は毎週行う必要があったため、とにかくアウトプットをしながら取締役と摺合わせを繰り返しました。 その中で考える軸が定まってくると次第と半年先、1年先、2年先と方向性が見えてきて頭の中がクリアになったのを覚えています。

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採用戦略について

まずは、採用すべき人数や役割を定義する必要がありました。 ただ、採用すべき人数は事業の方向性や事業スピードも加味する必要がありすぐには答えがでません。 仮説ベースで各事業がこれから数年で伸びる方向性を決め、それに必要な能力や役割・体制を考えていきます。 また、欲しい人物像のペルソナを作成し、新卒・中途・業務委託の採用基準を作ることで足場を固めていきます。 続いて、それらペルソナに照らしてどのように採用の人数を確保するのかを考えます。 当然、媒体を使うのですが、ウィルゲートの開発室として他社との違いをどこに見出すのかというのも考えます。 それらを統合していく事で、採用の戦略としてまとめ、戦術に落とし込みながら人事と協力して進める事ができました。

※採用はする側される側どちらも経験していますが、やはりこれは結婚のようなもので会社が求める事と採用者ができる事やりたい事のミスマッチは無くすべきだと思いますし、どちらかが上に立つべきではないと考えます。

事業開発全体の戦略

開発室は事業部付けだった事もあり、開発室としてまとまるというよりは各チームが事業を向いている形になります。 また、事業もtoC・toB・BtoBtoCと多岐にわたる為、何かを一つに纏めようとするのは非常に困難である事が分かりました。 であればいっそ、各事業方面に特化した戦略を考えた方が早いと思い、舵キリをしました。

メディアであればPVを上げるためのABテストを導入、リリース頻度・速度を上げるための組織作りを行う事、 コンサル事業であれば、社内ツールがほとんどですがそれが止まるとコンサル事業全体が止まるという事でテストの重要性を取り入れた組織作り、 コンテンツ事業であれば、そのバランスが最も効率的とは思いつつも、品質に難があったのでテストコードの導入による品質の担保・運用効率アップできる組織としました。 それぞれが独自に動く事で事業に特化した開発組織を複数束ねる為のキーが必要になってきます。

開発室の戦略

事業毎に分かれているとはいえ、開発室としてなすべきことも多々あります。 育成スキームやキャリアパスは組織として束ねる為には明確になっている事が重要です。 そこで各開発チームからスペシャリストを選出し、開発本部を設立しました。 開発本部の役割は事業から切り離しつつ、エンジニアのスキルを上げる最善方法を構築する事、各スペシャリスト(当時はフロント・インフラで途中からバックエンド)が自身のスキルだけではなく、相互協力してことに当たれる事を目的としています。

特に当時出た言葉としては、「イノベーション組織」というフレーズがあります。 イノベーターを中心に技術的な解決策を考えるスペシャリストが調査研究を行う事で、事業に革新を起こそうという取り組みです。 また、ユニット・チームという縦の構造を技術という軸で横串するマトリックス構造の組織というのも開発室ならではの方式でありました。

2017年4月はミドル層の育成に注力

組織の形が整いつつある中、次に開発室の課題として挙げたのはミドル層の薄さでした。 当時、ゼネラルマネージャーとして全事業開発を統括するという立場でありながら、マネージャーはインフラ・メディアしかおらず、他は私が兼任していました。 当然やるべき仕事が疎かになり、短期目線で動くことが増えてしまうと現場は安心しますが数年先が見えにくくなっていき組織コンディションは悪くなる一方です。 そこで、マネージャーの育成を中心に日々の動きを変化させました。

週次のリーダとの1オン1でマネージャーとしての役割を定義、チームやユニットの課題整理と推進方法など話しながら決める事での解決力向上 視座やスピード感をゼネラルマネージャーに合わせるようにスタンスを整えました。 また、メンバーの2年後にどのレベルまで成長させるかを、彼らの持っている現技術や技術の伸びしろ、性格など分析させコミットさせるようにします。 最後に事業の今後を事業部から提示してもらうだけではなく、同じ土俵でディスカッションできるように情報を渡しながらあるべき姿を伝え続けます。 技術の向上は早いですが、マネジメントスキルは一朝一夕で上がるものではありません。 時には失敗する事もありますが、そこは寛容に構えつつ、失敗を恐れて動かない時だけ指摘するようにしています。

特にウィルゲートのような複数事業・プロダクトを持つ開発組織では、トップからのビジョンで全員が一丸になるというより現場指揮官の能力次第で良いプロダクトができると思っているので、「現状維持」や「今の組織・チーム」といった現在を肯定し続ける事は変化に弱い組織になると思います。 また、マネージャーのあるべき姿は伝えますが、聞く人は一個人でしかないので、画一的な伝え方では意味がありません。 開発全員分のエニアグラムエゴグラムを取り性格分析をしながら、より個人にヒットする伝え方や指摘の仕方を考察しています。 これらを1年間続ける事で、2018年4月にはマネージャー2名を新たに推挙できるところまできました。

2018年4月から執行役員としての動き方・考え方

2018年4月からは開発室執行役員としての活動を開始しました。 ただし、それまで執行役員がいなかったので、ゼネラルマネージャー時代とあまり変わらず(役員会もゼネラルマネージャー時代から出ていたので^^) 組織長という立場から会社の長であるという意識を持つべきだというのを実感しました。 私はそれまで社外の方と繋がりを持つ事をあまりしてこなかったのですが、私がウィルゲートの顔であり開発のトップであるという事や社外や市場の状況を把握することが重要であると感じ、専務である吉岡にお願いして、似ている事業体や組織の企業にアプローチをし懇親会を開かせて頂きました(その時お会いできた方々には本当に感謝です) そういった取り組みの中から勉強会を共同で開催することができたり懇意にして頂ける方も増え開発の執行役員という立場で何を為すべきか見えてきたことがありました。

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経営に関わるエンジニアのトップとして

当然役員としての役割としてここは外せないところだと思いますが、今までは事業の状況や会社の状況とエンジニア組織を一部切り離して考えていたと思います。 エンジニアが出来る事と短期的な業績の連動性はウィルゲートの事業ではそこまで高いわけではなく、どちらかというと新規プロダクトの立ち上げや既存の運用サポートの動きが多かったと思います。 これは私自身が(エンジニアの)執行役員であるという枠を勝手に設けてしまっていた事に起因する問題で、本来であれば事業がどういう状況にあるか、今後どのように伸ばすのかを理解しエンジニアのリソース配分に最適解を設け、数年先の組織がどうあるべきか事業と連動させて考えるべきだと思いました。

ゼネラルマネージャー時代に行っていた各種戦略のアップデートを行い開発の組織としてではなく、事業最適解としての組織構造はどのようにあるべきかを他役員に伝えるのも仕事であるということ、 プロダクト作りに必要な開発手法やそこに必要なコストを経営陣とディスカッションできる状況を作る事も仕事であります。 また、事業側が考えるプロダクトの成長や方向性に対しても開発のトップとして対等にディスカッションできなければ執行役員としての役割は果たせていないと言えます。 もちろん私の専門分野は開発ではありますが、全事業に関わっている組織のトップとして事業部の戦略も全てを把握しなければなりません。 また、私の持っている知識や技術が組織の限界とならないよう固定観念にとらわれず、チャレンジできる環境の用意も必要になってきました。

ディレクター推薦と役割変更

開発本部にある各セクションのトップ(ディレクター)にはプロダクトの生産性を劇的に変える力があります。

※セクションについては下記参照

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また彼らの力を最大限生かすミッションを与えるのも大きな成長に繋がります。 そこで当時のプロダクト状況からディレクターの配置転換を行いました。 エディトルにはフロントエンドのディレクターを投入し、Reactでの新しいプロダクト作りを経験してもらいました。 TACTではバックエンド(現アプリケーションアーキテクチャ)の岡田を配置し、Laravelでのレイヤードアーキテクチャ導入推進を担ってもらうなど 通常の開発を行ったり、知識を身に付けたりするだけはなく、それを事業に活かす為の配置転換を繰り返す事で成果・成長に繋げていきました。

2019年4月から組織としての強さとは?

強い組織とは?というのを強く考える事が多くなったのは事実です。 2015年から比べてウィルゲートの開発室は『強くなった』と自信を持って言えます。 リンクアンドモチベーション様のモチベーションクラウドでも開発室は71.6というスコアを出し、一人一人の『will』を実現するという理念を体現できる組織になったと言えます。 だからこそ逆に組織のトップが居なくなったり変わったとしても変わらず理念を体現できる組織であるのか?という疑問がわき上がってきたのです。

私の考える強い組織とは、強い意志を持った個々人が大きな目的達成の為に協働し続ける自己組織化できる組織であると思っています。 ウィルゲートでの組織作りはマトリックス組織として役割と裁量を大きく持たせることで人を成長させることができました。 会社のビジョンや理念に共感し、それぞれが役割(役職ではなく組織上必要な役割)を果たす。そんな組織であってほしいと思いますし、 私が執行役員になって思った事業を成長させるための技術や知識をもっともっと持ってほしいと思います。 その辺りは2019年から執行役員になった向平にバトンタッチし、リーンスタートアップ的なアプローチやBizDevOpsの実践を通じ、これまで以上に強い開発組織となってくれることを願っています。

明日は現執行役員の向平で「今後にウィルゲートの開発室で目指したいこと」です。 向平であれば目指したいことを実現し、私が想像してきた以上の強い開発組織にしてくれることでしょう。 お楽しみに!